読書感想文

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vol.21 昭和16年夏の敗戦

猪瀬直樹著 中公文庫

①日本が対英米参戦を決定するまでのプロセス(表面)

 

明治維新大日本帝国憲法制定。但し、この時点で欠陥あり。

統帥権天皇に与えたことが全て。天皇神聖にして侵すべからずという風潮のため、のちに軍部が暴走しても誰も止めれない状況に。)

 

当初は藩閥政治のため、先述の欠陥をフォローしていた。ただ、藩閥に属さない人は出世ができないので不満がたまる。

 

軍部によるクーデター(五・一五事件二・二六事件など)

藩閥政治の崩壊で軍閥に移行。統帥権のもと行動する「大本営本部」は軍部が掌握したため、勝手な暴走をしながらも、誰も止めれない事態に。

 

天皇は日米開戦を避けるため、近衛文麿内閣が倒れた後、東條英機を総理大臣に指名。

東條は、統制派で自身も開戦論者ではあったが、天皇には絶対に従うという気質。以後、天皇に従い、開戦阻止に向かう一方、自身がもともと所属していた軍部との軋轢に悩むことに。

 

結果、開戦の結論になる。→敗戦

 

自身も自決を図ろうとするが、天皇に責を負わせたくないという自身の思いと、GHQの思惑が重なり裁判へ→絞首刑。東條らは、戦争を起こした張本人として時代の転換期に伴う生贄となり、悪役となることに。

 

②問題点など

・戦争はするものという結論のもと、根拠が作られていたこと

例)石油のデータを、数字内に合わせたこと。数字が合わないからできないというものではなく、数字内に合わせるというもとで計算されたこと。

・戦争を始めるのはいいが、終わり方、終わった後のビジョンが皆無

・損得勘定に精神論を持ち込んだこと。精神は大事かもしれないけど、それはあくまでも補助的なもの。また、ハル・ノートに関しても、投資先として経済的に魅力がない地域を「死んだ英霊に申し訳ない」という理由で手放せなかったこと。

不良債権を認めない文化

 

③考察など

・日本が戦争を起こしたのは、最高の政治ではなく、事務的な官僚と言える。東條英機はあくまでも「開戦宣言をしただけ」

・それぞれが仕事を遂行していく中で、誰かが最高責任者となることはなかった。

・意思決定の根拠はディテールに基づくべき。根拠から結論を導くべきで、結論によって根拠を作るべきではない。

・日本人は歴史意識を持とうね。薄すぎ。歴史を振り返って、問題を考えてみることを大事にしよう。