読書感想文

読書感想文を書くための私的ブログとなってます。@kansobun_bookでインスタしてます。

vol.110 本を読む人だけが手にするもの

藤原和博 著 日本実業出版社

 

・読書をすることで様々な思考を養うことができる。例えば、自分とは違う他人の脳のかけらを身につけることで、複眼的思考や想像力を養うことができるだろうし、そこから、報酬が上がったり、様々な人を引きつけることができるだろう。

・元より、これからの時代に求められるのはレゴ型思考である。今までは、特定の正解に早くたどり着くためのパズル型思考が求められ、日本教育もその方向にシフトして行った。アメリカに戦争で大敗し、占領された日本はアメリカという正解を目指していた。今は、その正解がなくなり自分たちでその答えを編み出していかないといけない。

・また、複眼的思考を持つことで、自分中に鳥瞰図を持つことができる。これは、人生=仕事という方程式を外し幾つもの軸を形成するのに役立つ。

・これからは情報収集能力ではなく、情報編集能力が物を言う。今までは、集めた情報から判断するというプロセスを人間が担ってきたが、これはAIが高速でこなしてくれる。これからは組み合わせの時代だ。なので、今あるものを組み合わせるという意味で情報編集が必要になってくる。

 

 

 

vol.109 空気を読む脳

中野信子 著 講談社+α新書

 

第1章

人間は集団を形成することで繁栄を築いてきた生き物である。そのため、自分を犠牲にして他者を救うことや、利他性を司る部分が発達してきた。日本人は特に、セロトニントランスポーターの量が少なく、不安傾向があり、同調する傾向があるとされているが、そこから、フリーライダーを許さない構図が生まれ、不倫や不祥事のバッシングが強まる傾向がある。しかし、人生という予測不能な事態の連続はまるでギャンブルであるかのようで、そこへの対抗として、新規探索性への興味も惹きつけられるようになった。異性がダメ男を好きになる原理も、未知のものに惹きつけられたからである。また、ダメ男は性への衝動が強く繁殖能力が高いので、交われば自分の遺伝子を残せるというメリットがある。

 

第2章

女性は図らずも呪われた性になってしまった。女性の容姿が良いと、管理職に適さないという判断が為されたり、嫌味・妬みの対象となってしまう。かと言いても、容姿がそこまでで、バリバリ仕事をしてきた人であっても、結婚しないという嫌味・妬みのプレッシャーを受け続け、気付いたら周りに妥当な人は残っていないという状況になってしまう。

親の立場になった時、自分が受けた失敗をさせたくない、自分以上に成功して欲しくないという思いから、過度の干渉やレールを敷いたりしてしまい毒親になってしまう。

 

第3章

褒めるというのは非常に危険である。自分が頭が良い子だという周りからの称賛を受けていることに自覚した子供は、その環境で得られるメリットを享受していくため、失敗を恐れたり、チャレンジをしなくなってしまう。また、自分が継続して評価されるためにウソをついたりすることもある。データの改竄・偽装はここから起きる。努力や工夫を褒めていきましょう。

 

第4章

不安傾向が高い人間は長寿で健康で居やすい。また、合理性とはかけ離れた思考回路が存在するのも、生存戦略に意味があるからである。AIの発達などで世界が大きく変容している現在で、自分が持っているカードを冷静に分析して生き抜いていこう。

vol.108 コンサルタントが毎日やっている会計センスの磨き方

日本経済新聞社 長谷川正人 著

 

習慣1:数字で共通認識を持つ

就活生であってもコンサルタントであっても企業の良し悪しを判断する基準を一つ挙げるならば、それは「数字」である。企業の数字を見てみよう。

 

習慣2:3つのレベルと5つポイント

企業の数字を見るときは業界、競合他社、国レベルのマクロ分析の3つのレベルと、時系列で見る、数字の桁に気を付ける、最新のデータを使う、フローかストックか注意する、金額と数量の両方を見る。

 

習慣3:身近な企業から数字の感覚を掴む。

その中で、薄利多売、高収益を説明できるようにする。

 

習慣4:大きな数字は分解する。

消費者相手のビジネスなら、客単価×数量で売上が説明できる。

 

習慣5:投資家やアナリストの視点から観察する。

株券の所有比率の変化から力関係を学ぶ。自己資本比率は高まり、機関投資家、外国人投資家が増えてきている。

 

習慣6:個人の会計と企業の会計を理解しよう。

貯蓄は、企業に取っては推奨されない。利益は、新たな利益の創出のため再投資されるか配当金を増やすかで貯めることは良くない。

 

習慣7:イメージで判断しない。

時価総額ベースで見た時に、百貨店の大きさはそこまででなく、spotifyなどの新興企業の方が時価総額を上回るケースがある。

 

習慣8:会計センスの磨き方

四季報を持つ、ガッチリマンデーを見る、企業のセグメント情報をチェックする。

 

 

vol.107 京大的アホがなぜ必要か

集英社新書 酒井敏 著

・先のことは何が起こるか分からない。「バタフライ効果」と言ってブラジルでの蝶の羽ばたきがアメリカでのハリケーンをおこる程、複雑な構造になっている。

・人は文明の発達に伴う技術の発達により、ありとあらゆるものの物理法則を見つけ出してきた。しかし、人々はありとあらゆる物を物理法則で解明・説明できるという思い込みに陥ってしまっている。

・人々は樹形図構造が世界を支配していると思っている。何かの事象がある結果をもたらし、そこからまた新しい物が生まれるという積み重ねこそがこの世界の真理と思っている。しかし、実際存在するのはスケールフリー構造である。(一部の人が圧倒的力を持ち、残り8割が少ない力を持つ)これは、想定外の事件が起きて、種の大半が消滅しても生き残れる知恵である。(これはランダム均等分布より全体の生存率が高い。)

・人は結果に対して明確な原因を求めたがる。しかし、結果オーライの可能性もあることを認識して頂きたい。キリンは遺伝のミスコピーが原因で首の長い物が生まれ、それがたまたま環境と上手く適合した。決して「木に生えてある草を食べるために意図的に首を伸ばした」なんてことはない。

・このように、カオスなことが起こりうる世界ではそうすればいいのか。それはアホと真面目の間、臨界状態を行き来して生きることだ。アホなことは、想定外の事態を生き残ることだったり、それまでの枠から飛び越えた新しい発想=イノベーションのきっかけになる。ただし、このアホは近眼的には成功しない。夥しい数の犠牲を出すことになる。なので最低限の真面目さは備えておきたい。

・そこで見直したいのが「役に立つ」ということだ。今の日本の主流は選択と集中。役に立ちそうな技術に資本を投下する手法だが、これは非常に危険だ。選ばれると、その分野は役に立つ成果を出すことが求められ、これは研究や発想の幅を狭めてしまう。枠の中から飛び出し、今まで世の中に出てきていないのだからイノベーションであり、既存の研究にプラスαを積み重ねても得られるものは限定的な物だ。

・これからの戦略は発散と選択。様々なことに手を出してみて緩く選択すればいい。   

・今すぐに役立たないガラクタな知識や実験は単に人々の知的好奇心を突き詰めるだけのものだ。しかし、本来の研究とはそういうもので良いし、そのガラクタを横断的に繋げることでイノベーションは起きる。

vol.106 バルミューダ熱狂を生む反常識の哲学

日経BP 上岡隆著

・技術先行の物づくりはしない。私たちはお客様に「素晴らしい人生」を提供する商品を生み出すだけで、必要もないのに最新技術を追う必要はない。

・楽しさと疲労は1セット。楽な道に楽しさはない。疲れるほどの仕事に楽しさはある。

・ポジティブな人の方が成功する。試行回数が増えるからである。

・読書量は語彙力の向上に繋がり、言葉を変えると10年後の収入が変わる。

vol.105 世界を変えた10冊の本

池上彰 著 文春文庫

 

アンネの日記

ユダヤ人の少女であるアンネが、ナチスドイツの弾圧から逃れてオランダで身を潜めている最中を綴った物語。この本により、ユダヤ人に対する同情を誘い、イスラエルパレスチナ侵攻に対して強く出れなくなった。

②聖書

旧約聖書新約聖書のどちらも。旧約聖書ユダヤ人の律法をまとめた物で、新約の方はイエス・キリストが誕生してから、その言葉をまとめた福音書の紹介。

コーラン

イスラム教の聖典ムハンマドが天使ガブリエルから伝えられた神の言葉を頑張って翻訳した内容。ジハードやイスラム教徒が守るべき五行などを収録してある。

④プロティスタンティズムの倫理と資本主義の精神

プロテスタントが多い国が資本主義として発達したことから、資本主義が発達したのはプロテスタントの「天国に行ける人物は既に決まっている」という予定説に従い、自らがそれに選ばれていると確信するために懸命に働いた結果もたらされた物だということ。現在では宗教的な消え、懸命に働くという部分が残っている。

資本論

貨幣には交換価値、使用価値の他に貯蔵価値があることを示し、労働者を商品として搾取して富が蓄積されると格差社会が生まれ、革命が起きて資本主義が崩壊するとした本。本書では、それに取って代わる社会主義共産主義の内容について言及していないが、ロシア革命や中国での毛沢東による共産主義が誕生するきっかけに。

イスラーム原理主義の「道標」

主権は国民ではなく神のみが持っており、堕落しきったイスラム教徒やイスラム教が布教していない地域である無明社会を敵としてジハードを仕掛けるべきだとする内容。世界中でテロを起こすイスラム過激派の思想の根底にあたる。

沈黙の春

農薬DDTの影響と農薬の具体的な代替案を提出した名著。現在の資本主義を経営者の方に重きを置きすぎているとして消費者のための中立機関(日本でいう消費者庁)の設立も訴えた本。

種の起源

生物は進化を繰り返して環境に適した形へと進化を遂げていると述べた本。それまで宗教の生き物は全て神様が作られたとする創造説を覆し、弾圧をうけることになるが、遺伝子学、分子生物学に大きな影響を残す。生物学の外で、適者生存の理論で社会ダーウィニズムが起こる。

プロテスタントが多いアメリカでは今でも論争がある。

⑨雇用、利子、および貨幣の一般理論

不況時には、政府が公共事業への支出を増やすべきだという現代の常識を生み出した本。それまでは、不況時においても政府が手を出すべきではないとされていた。ただし、好況になっても支持者や経済界からの圧力で財政切り詰めと赤字の解消を後回しにし、ギリシャポルトガルなどが慢性的な財政赤字になっている。

⑩資本主義と自由

前の一般理論とは打って変わって、小さな政府・新自由主義の元になった本。国立公園・農作物の買取保証制度・最低賃金なども要らないとした。また、経済は不安定でコントロールできないという見解のもと通貨の変動相場性や景気には政府の財政出動より、金融政策で流通量を増やすといった内容を提唱。こうした自由主義は強者の論理で格差の増長になる気がする。

 

vol.104 私とは何か

平野啓一郎 著 講談社現代新書

 

・何か一つの本当の自分は存在しない。人間の実体は幾つかに分かれている「分人」と表すのが正しい。人は、何か一つの自己を持った上、仮面やペルソナをつけて生活しているのでは、相手との付き合いの長さや関係性を踏まえた上で最適化された自己が出てくるのだ。それでも本当の自分とやらを探すのであれば、出てくる分人全てを認めてあげよう。

・分人は他人との関わりによって形成される。大抵の場合、人間は親との分人をベースにして分人を一つ作り、そこを足場にして他の分人を親以外との接触を通じて作成する。例えば、自分を変えたいという場合は、自分が接触する人を変えたり、接する時間を調整することで分人を変えていくことができる。

・そのため、自分探しの旅と題して、海外旅行に出かけるのも、そこでの生活や接する人の変化があることを考えれば、納得できるところはある。そうやって分人は形成していくなかで、自分の好きな分人を足掛かりに生きれば良い。人は、自分が幾つぐらいの分人を持てば快適に過ごせるのかを試しみると良い。

・恋と愛は分人を定義する上で非常に重要な要素になる。恋と愛は継続性という観点で大いに異なる。愛のように継続性が求められる場合は、互いの献身の応酬ではなく、相手と接している状況で、自分自身の中に何か特別なものを感じている状態を指していると思う。愛している状態も、「あなたと接している時の自分の分人が好き」という自己肯定感があることを指していると思う。そのため、自分が不倫で悩んでいる時は「この人と接している時の自分は好きか?」という自分本位の姿勢で考えてみてはいかがだろうか。

・この本書で重ねて述べることは分人の構成比率を考える。自分の好きな分人を元に自己を形成するという二点だ。そして、分人は他人とのコミュニケーションを通じて形成される。これからを生きていく中で、そのバランスを探し、見直していく必要がある。