読書感想文

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vol.107 京大的アホがなぜ必要か

集英社新書 酒井敏 著

・先のことは何が起こるか分からない。「バタフライ効果」と言ってブラジルでの蝶の羽ばたきがアメリカでのハリケーンをおこる程、複雑な構造になっている。

・人は文明の発達に伴う技術の発達により、ありとあらゆるものの物理法則を見つけ出してきた。しかし、人々はありとあらゆる物を物理法則で解明・説明できるという思い込みに陥ってしまっている。

・人々は樹形図構造が世界を支配していると思っている。何かの事象がある結果をもたらし、そこからまた新しい物が生まれるという積み重ねこそがこの世界の真理と思っている。しかし、実際存在するのはスケールフリー構造である。(一部の人が圧倒的力を持ち、残り8割が少ない力を持つ)これは、想定外の事件が起きて、種の大半が消滅しても生き残れる知恵である。(これはランダム均等分布より全体の生存率が高い。)

・人は結果に対して明確な原因を求めたがる。しかし、結果オーライの可能性もあることを認識して頂きたい。キリンは遺伝のミスコピーが原因で首の長い物が生まれ、それがたまたま環境と上手く適合した。決して「木に生えてある草を食べるために意図的に首を伸ばした」なんてことはない。

・このように、カオスなことが起こりうる世界ではそうすればいいのか。それはアホと真面目の間、臨界状態を行き来して生きることだ。アホなことは、想定外の事態を生き残ることだったり、それまでの枠から飛び越えた新しい発想=イノベーションのきっかけになる。ただし、このアホは近眼的には成功しない。夥しい数の犠牲を出すことになる。なので最低限の真面目さは備えておきたい。

・そこで見直したいのが「役に立つ」ということだ。今の日本の主流は選択と集中。役に立ちそうな技術に資本を投下する手法だが、これは非常に危険だ。選ばれると、その分野は役に立つ成果を出すことが求められ、これは研究や発想の幅を狭めてしまう。枠の中から飛び出し、今まで世の中に出てきていないのだからイノベーションであり、既存の研究にプラスαを積み重ねても得られるものは限定的な物だ。

・これからの戦略は発散と選択。様々なことに手を出してみて緩く選択すればいい。   

・今すぐに役立たないガラクタな知識や実験は単に人々の知的好奇心を突き詰めるだけのものだ。しかし、本来の研究とはそういうもので良いし、そのガラクタを横断的に繋げることでイノベーションは起きる。