読書感想文

読書感想文を書くための私的ブログとなってます。@kansobun_bookでインスタしてます。

vol.104 私とは何か

平野啓一郎 著 講談社現代新書

 

・何か一つの本当の自分は存在しない。人間の実体は幾つかに分かれている「分人」と表すのが正しい。人は、何か一つの自己を持った上、仮面やペルソナをつけて生活しているのでは、相手との付き合いの長さや関係性を踏まえた上で最適化された自己が出てくるのだ。それでも本当の自分とやらを探すのであれば、出てくる分人全てを認めてあげよう。

・分人は他人との関わりによって形成される。大抵の場合、人間は親との分人をベースにして分人を一つ作り、そこを足場にして他の分人を親以外との接触を通じて作成する。例えば、自分を変えたいという場合は、自分が接触する人を変えたり、接する時間を調整することで分人を変えていくことができる。

・そのため、自分探しの旅と題して、海外旅行に出かけるのも、そこでの生活や接する人の変化があることを考えれば、納得できるところはある。そうやって分人は形成していくなかで、自分の好きな分人を足掛かりに生きれば良い。人は、自分が幾つぐらいの分人を持てば快適に過ごせるのかを試しみると良い。

・恋と愛は分人を定義する上で非常に重要な要素になる。恋と愛は継続性という観点で大いに異なる。愛のように継続性が求められる場合は、互いの献身の応酬ではなく、相手と接している状況で、自分自身の中に何か特別なものを感じている状態を指していると思う。愛している状態も、「あなたと接している時の自分の分人が好き」という自己肯定感があることを指していると思う。そのため、自分が不倫で悩んでいる時は「この人と接している時の自分は好きか?」という自分本位の姿勢で考えてみてはいかがだろうか。

・この本書で重ねて述べることは分人の構成比率を考える。自分の好きな分人を元に自己を形成するという二点だ。そして、分人は他人とのコミュニケーションを通じて形成される。これからを生きていく中で、そのバランスを探し、見直していく必要がある。