読書感想文

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vol.68 風姿花伝

世阿弥著 講談社学術文庫

 

・まず、年齢別による指導法について述べている。

稽古を始めた7歳は、のびのびとやらせ、型に嵌めることをしてはならない。12歳ごろに、稚児の美しさのため人気が出るが、油断することなく型を守った稽古に打ち込むこと。25歳ほどになるとようやく花がつき始め、35歳頃が全盛期になる。40歳を過ぎたら、引退するべきである。

 

・次に役柄別の振る舞いについて

・まず、大前提として役に個性というものはなく、その型通りに振舞わないといけない。また、能においては「花がある」ことが重要なため、老人を演じる際、腰を屈める。身丈を詰めるといったことをしてはならない。

・能は仮面をつけてするので、ひた面の時も顔を動かしてはならない。

・物狂い「憑き物」の場合、姿や役柄に一貫性を持たせること。女の霊がついた男。鬼の様な女などは存在しない。

・鬼を演じる時も、あまりにも写実的すぎると面白さがなくなる。よく研究しましょう。

 

・問答

・能は場に強く影響を受ける。達人はその場を見たとき、成功するかしないかが分かる。能は見ている人のためにするものであるため、見ているお客さんも気にする。

少しざわついている場なら、声を張り上げ、動作も大きくする。昼と夜でも空気が異なる。昼はあとほどに良くなり、夜は最初が良い。夜は気分が沈滞しがちになるので、二番目にする能を最初にし、明るめで盛り上がる一番目を後にする。

・多くの曲を持つことも重要である。典拠が正しいものを持つこと。

・本当に能がうまい人ならば、流派や人物、場所を問わずに上手い演技ができる。

・また初心を大事にすること。上手であっても、初心者や後輩にも教えを請い、傲慢になってはいけない。自分より下手な人からは学ばないと執拗になるとそれ以上の芸の向上は望めない。

・能を極めるにあったて、そのほかの道に行くことはよくないが、歌道だけは奨励する。情操を培い、知識を吸収できるからである。これはまた、能の楽曲を作ることにも役立つ。

 

・神義

・能の起源として、昔、天照大神がお籠り遊ばせし時、地上では光が遮られて暗闇になってしまった。このため、神様の気を引こうとして踊り出したのが始まりで、その結果、岩を少しで開けてこの舞を除いたことから光が戻っていった。

 

・私儀

・一族の発展のためには経済的なことも考慮すべきである。能役者が広く大衆に支持されなければならない理由はここにあり、特定の誰かにはウケる様なことでは家の維持発展には繋がらない。

・心はかなり重要。時々に咲く花はあるけれども、老人になってからも花があると認められるのは皆、これを持っているからである。この心は初心のものでなければならない。また、役柄を演じている時も、鬼を演じている際に、雑で大味な印象にならないために、その心は柔和なものでなければならない。

・能の楽曲を作る際は序破急の流れ、言葉遣い、典拠の正しさが重要ある。難しい言葉(梵語・漢語)を多用するのは良くない。また、演技を組み立てながら作ると良い。後付けで体の動きを当てはめるのは良くないやり方。

・日頃の稽古もさることながら、曲の理解も同時に行わなければならない。

 

・別紙口伝

・秘密にすることは、それをすることこそが価値がある。その内容が空虚なものであったとしても

 

・曲の理解度も高く、老体になっても、様々な年齢層の人物を演じ分けられ、常に演技に花がある観阿弥ってすげぇ。