読書感想文

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vol.90 本当の貧困の話をしよう

石井光太  著  文藝春秋

 

第1章

 日本の治安は福祉制度によって守られている。これがなければ、貧困層が犯罪などに手を染めてる事例が多発していただろう。貧困が生む一番の問題点は自己肯定感の欠落で、貧困層の子供は周りの環境から少しづつ形成されてしまう。これを打破するためには(というか、普通の人でも)自己肯定感の育成のため、周りのサポート×自身の行動力を通じて、前向きに生きることが重要である。安室奈美恵クリスティアーノ・ロナウド程、突出した才能を持っていなくても、自己肯定感を通じて心のレベルアップを果たせば、生きていく力になる。

 

第2章

 グローバルな視点で貧困を見てみる。とにかく生存環境が悪く、上下水道や水などの整備が進んでおらず、感染症寄生虫による健康被害が多発している。また、児童労働が横行しており、危険な目に合わせ、教育の機会を奪っているのも問題だ。ただ、この子供は日本で見られるような自己肯定感不足は見られない。というのも、周りも自分と同じ状況であり、共に支え合って生きている文化なので、周辺環境による心の傷化が起こらない。(日本は、貧困層、中間層、富裕層がごちゃ混ぜになるので自己否定感が起こりやすい)こうした違いがあるので「日本の貧困の方がまし」という理論は成り立たず、解決すべきポイントも違ってくる。

 

第3章

   貧困社会では、お互いの助け合いで生きているが、そのセフティーネットから漏れた子はどうしてるか。これは、かなり悲惨で、物乞いや犯罪、薬物感染になったり、犯罪に手を出したりする。また、女の子なら、売春などで生計を立てるようになる。このような生活を長く続けた子の自己肯定感は著しく低く、普通の生活に戻すのは並大抵ではない。

 

第4章

   女性とSEXについてもう少し考察。女性が売春に走る原因として「愛情飢餓」がある。周囲の環境から愛を受けておらず、友達や家族などから足りないがため、不良グループなどに陥ることがある。また、sex と薬物は密接に関係しており、薬物抜きのsex には満足できない体になってしまう。女性は、自分の悲しいストーリーを自己完結させようとする性格があるため、落ちていく速度も速く、深度も深い。このような方を救うには当事者パワーを持ったNPOが鍵である。優れた団体にはこうした力がある傾向だ。

 

第5章

   次は貧困から少年犯罪について。どの時代にも、貧困の子供は存在して、孤児→校内暴力→いじめと推移し、今は虐待の時代と思える。虐待の子供は自己否定感の低さから、上手く社会に馴染めないため、同じ境遇の子供同士でも、薄っぺらい人間関係になる。そういう子供には、物凄い物との出会い。それは、人や音楽、本かもしれないが、そういう出会いがあれば大きく変革していく。

 

第6章

    貧困は国や世代を超えてやって来る。貧困の放置は、莫大な税金の損失と犯罪によるしっぺ返しという形でやってくる。ここで意識したいのは、貧困を国や税金に頼らず、地域住民である私達の行動で救ってほしい点だ。それらの限界があることを受け止め、各々のやり方で世界を変えていってほしい。